奇妙な体験

理解不能な奇妙な体験を残していく

輝く庭

(1981/00/00/夏)




小学生の頃。子どもは何かと新しい遊び場を探して探検してみたりする。


遠距離でもない冒険でもない好奇心から単にいつもの道を寄り道して入ったことのないルートへ。

舗装されていない1人が歩ける程度の砂の道、その向こうに見えるのは低い丈の草むらがひろがっており輝いているように花々が広がっていた。

少し警戒しながら砂の道からその場所へ。草むらは中規模月極駐車場程度の広さ、散り咲く美しい花々にまるで砂漠でオアシスを見つけたかのごとくに輝いて見える花園に息を飲むという体験をする。


その場所で冒険の成功と秘密基地のような遊び場を発見できた歓びからはしゃいだ。暫くして友人とテンションも落ち着き周囲を見渡す。

その花園のような場所の隅に例えるなら納屋に似たこげ茶色の木造平屋がある事に気付く。

6畳もないであろう木造平屋の前に物干し竿置きが寂しく置いてあり、誰か住んでいるんだ住人の庭なのだと察し友人と申し訳ない気持ちで帰ろうと会話し急いだ。砂の道へと歩いてくと背後から「こんにちは」「一緒に遊ぼう」と幼稚園児ほどの子ども2名と小学生らしき1名の姉弟たちがと話しかけてきた。

ここで少し遊んで本当にいいのかの質問に了解され無邪気に子どもらしい遊びを初める。それぞれ互いに名前を教え合う。

暫くして何やら女性の声がし子どもたちに声をかけていた、母親ですと挨拶され気まずく感じ友人とそろそろ帰ろうと内緒話をして切りよく「また遊びに来てもいいですか?」と声を掛けると「遊んでくれてありがとう」「また今度遊びに来てね」と手を振られその一家から見送りを受ける。


学校で凄い場所を見付けたと休み時間に思い出し話をしていたとき、そういえばまた遊びに来てと言っていたねと会話し、終業し帰り道にそれぞれ自宅に帰ったら待ち合わせをしてあの花園へ行こうと約束することとなった。

知っている道からの寄り道なので道に迷うこともなく砂の道を目指す、辿り着いて目前に確かにあの短い草むらが見えた。あの子たちのお母さんも笑顔で許してくれているし前より気を使わないであの子たちと遊べるねと話しながら。


2度目、その砂の道が入り口の花園のような庭へと訪問しお互いそれぞれ名前を呼び合い仲良くはしゃぎながら笑い遊ぶ、たのしいまま夕方も迫る時間となり今度とまた約束をし友人とそれぞれ自宅へと帰る。


3度目、ほんの1メートル少しの砂の道を進むと目前にはあの短い草むら、どうしてか美しく元気に咲いていたはずの花々は何処にもない。疑問を感じながらも友人となった子どもたちの名を呼ぼうと木造平屋のほうを見た、嘘のようにまるで朽ちかけた単なる木造小屋と変わり果てていた、声を掛けようとも誰からの返事などもない。

どうしたのかと物干し竿置きを友人が確認してみたようで呼ばれるままそれを見る、腐食していた。最後に全体を今まで来ていた所だと間違いはないと確信するも危険を感じているのと近い恐怖心で焦りしかなくなり、友人と知らし合わせてもないというのに全力でその場から走って逃げた。


そして、国道へと続く道まで数分は全力で走った。あと数メートルで通行人や交通量の多い国道、息が切れてペースが落ちる。走りながら追いかけてくる足音が聴こえる、突然背後から獣がうめき怒鳴るも言葉ではない理解不能な大声がした。

追いかけてくる、ペースを上げて逃げながら振り返ると見知らぬホームレスのような毛むくじゃらな男性が真冬に着るフェイクファー襟の紺色作業ジャンパーを来ていた、どうやら捕まえようとしている。

友人が目の前を走っていた、その後ろを走りながら獣の怒鳴り声で何かをわめき散らしている男から得る恐怖で初めて腰が抜ける。

大声で「助けて!腰が抜けた走れない!」と、友人にできる限りの大声で助けを求めた、声が届いたおかげで友人は慌てながら怯えつつ手を差し伸べに戻って来てくれた、走りながら男が迫りつつある、ほんの数秒間に戻ってみたものの逃げようか助けようか困っているのが動作と表情で解った「もう誰か助けを呼んできてほしい」「来るから逃げて」と言い放ったやり取りのその数秒はとても長くも感じた。

同時に国道沿いに成人男性の通行人が通りがかり獣のうめき声男は数度振り返りこちらを睨みながら何等かを聞き取れない言葉で呟きながら何処かしらへと逃げたようで、もう見当たらなかった。それから学校の休み時間でその事について一度だけ話題になったのみで避けるように話をすることはなかった。そんな真夏の奇妙な体験。



ー RAINBOW ー

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