奇妙な体験

理解不能な奇妙な体験を残していく

走る男の子

RAINBOW

(1982/00/00)春から初夏にかけてのある日


珍しく家族とリビングで着替えもせず学校関係の事や悩みを聞き時間が過ぎた、もう午後の半ばに小学低学年の末っ子が玄関を開け帰宅すると急いで足音を響かせ階段を駆け上がって行った。数分後階段をまた激しく駆け下りてくると何故だろうかランドセル姿のままトイレのドアを雑に閉めた。

リビングのドアは閉めきっておらず1人が横向きに通れるかのどうかの隙間を開けていた。そこから末っ子の階段上り下りや急いでいた様を家族としっかり見ていた、挨拶や声掛けするも決まっているかのように返答があるはずなのに、ない。

きっとお腹を壊しているのだろうと話の続きをして30分程、あまりにもトイレから出てこない末っ子の事が気になる。

倒れているのではないかと話にもなりトイレ前へと向かう。ノックをして名前を呼んで伺う、返答は何もない。

照明のスイッチはオンにされてあり倒れている可能性も有るのではないかとドアを引く、が鍵は閉まっていた。何度も開けてみようとトイレのドアを続けざまに引くも開かず緊迫気味に名前を呼びノックしてみると一度、か弱いノックが返ってきた。

困ったことがあるならばすぐに呼ぶようにと一方的に告げて部屋へ戻りそのやり取りをして家族もトイレを確認してみるが照明がつけられ鍵も閉まっていることから便秘か何かなのかもしれないと判断して、閉じ籠もっているのではなく単にトイレが長くなって無理矢理どうにかノックを返してくれたのだろうと解釈し初めからの話をまた続ける。


それからしばらく過ぎて、玄関鍵がガチャガチャと開けられる音がしていたので「え誰?」と少しパニックになる。

急ぎ家族と一緒に玄関へと行くとドアは開き何事もなかったかのように「ただいまー」と末っ子が立っていた。トイレに居てたくせしてイタズラしてカラカッテはいけないよと家族と帰宅してきた事からトイレに行くまでの簡単な話をしてみて叱るが知らないと言う。

今までトイレに入ってたでしょうと呆れながら照明が消されていないドアを引いてみると開ける事もできなかった。

気味が悪くなり全員でリビングに集まる。見知らぬ誰だか知らない小学生が一体何故勝手にトイレに入ってるんだと、強引に開けるしかないなと話をする、開けないとこれからトイレを使いたくなった時どうするのかと切実な疑問も出てきた頃、もう一度だけ勇気を出し開けられなくなってしまっていたトイレのドアを強く引いて開けようと試みる。

勢いよく抵抗もなく軽すぎるほどにドアは開く、そこに誰の姿もなかった。


ー RAINBOW ー

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